ルノアールという「場」の再発見

昨日、古い友人二人と久しぶりに集まった。今回は飲むでも食べるでもなく、ただ腰を据えて知的な会話を楽しもう、という少し珍しい目的の会だった。幹事が選んだ会場は喫茶室ルノアール。正直に言えば、店名を聞いた瞬間「えっ、懐かしいな」というのが第一印象だった。

しかし、実際に足を運んでみると、その印象は良い意味で裏切られた。結果から言えば、これが実に快適で心地よかったので、記しておきたい。

f:id:kaccinster:20260123174626j:image

思い返せば昭和の時代、喫茶店は町の至る所に存在していた。コーヒーだけでなく、トーストやサンドイッチといった軽食もあり、人々は友人とのおしゃべり、読書、あるいは一人で静かに考え事をする場所として喫茶店を日常的に利用していた。喫茶店は、生活の一部だったと言っても過言ではない。

ところが1990年代になると、欧米型の外食文化という大きな波が押し寄せ、従来型の喫茶店は次第に姿を消していった。欧米型には大きく二つのタイプがある。一つはマクドナルドに代表される回転重視型、もう一つはスターバックスに象徴される「環境を売る」タイプだ。後者は必ずしもコーヒーの味そのものを売りにしているわけではなく、空間や雰囲気を価格に乗せて提供するビジネスモデルだと言える。

そして昨日、ふと気づいた。ルノアールは実はこの「環境を売る」モデルの先駆けだったのではないか、と。だからこそ、あの激動の時代を生き残ってきたのだろう。

実際、店内の客層を見渡すと、中高年が中心で、皆が静かに会話を楽しんでいた。決して騒がしくなく、時間に追われる感じもない。コーヒーの価格は確かに高めだが、落ち着いて話ができるこの空間を考えれば、十分に納得できるものだった。

久しぶりに、喫茶店という「場」の価値を再認識した一日だった。昭和の遺産だと思っていたルノアールは、実は今の時代にこそ合っているのかもしれない。