トレーシー日本兵捕虜秘密尋問所

この本、10年以上前に読んで衝撃を受けたのですが、最近改めて読み直してアメリカの情報の扱い方の凄まじさを再認識しました。f:id:kaccinster:20230317160905j:image内容は大東亜戦争中に2千人強の捕虜を尋問して、ありとあらゆる情報を聞き出していた事を研究して居ます。第一に我々は日本兵の捕虜は戦いが劣勢になって以降に発生したと思いがちですが、この本では戦いが始まってすぐに捕虜を捕獲して秘密裏に尋問していたと紹介しています。また、尋問に際しては第1級の日本文化研究者と2世を使かいました。また、捕虜の尋問室と居室に当時は無かった最新鋭の盗聴器が仕掛けられていて、盗聴内容を専門家が徹底的に分析しました。今日では世界的に盗聴の違法性が認識されて居るので、米国としてはこの収容所の存在を戦後も徹底的に隠して居たと思われます。大学生の時にルース・ベネディクトの「菊と刀」を読んでその分析の確かさに驚きましたが、この本も対日戦の為の研究の一環だった事を知りました。この収容所で得られた情報は膨大な物で、一つは日本の工業施設の位置や内容で、これは空襲に徹底活用されました。この本の最初に方に出てきますが三菱重工名古屋工場のレイアウトや詳細を尋問から得て居ます。皇居の中の情報もハッキリ聞き出して居ます。次に捕虜達の日常の会話から日本人のメンタリティーが研究され、その成果が戦時中の対日放送や投下ビラの制作に活かされて居ます。↓は水戸の博物館で見た投下ビラですが、こんな内容は余程研究しないと書けないと思います。読みにくいですが、右から縦に読んで下さい。f:id:kaccinster:20230317163658j:imageこの盗聴手法は巣鴨プリズンでも使われていたそうです。ここまで、徹底した情報分析は単一民族国家である我が国では出来ないと感じました。この本の素晴らしさのほんの一部しか紹介出来て居ませんが、著者の中田氏に感謝します。